ぼくは循環器専門医だけど、心電図が読めない

どうも、たおらーです。循環器専門医の書く徒然草。

医療ニュース|死亡確認の流儀~大阪市消防局のニュースを踏まえて~

どうも、たおらーです。最近PC買い換えまして、その一発目の記事です。

 

自分が主治医で診ている患者さんが亡くなる場合(それもある程度入院後経過し、心不全でも感染でもコントロールは困難な患者さんの場合をイメージしている)。もちろん急変ということはあるのですが、なるべく、徐脈になる前に連絡し、ご家族に来てもらい、最終的に(すでに蘇生術などは行わないと確認している場合が多い)蘇生の有無などを確認する。このときに「これから徐々に血圧、脈拍が低下していくと思います。」などと説明するケースが多い。徐脈になり、wide QRSになり、心停止に至る。頃合いを見計らって、最後の診断を行う。心拍停止、呼吸停止、瞳孔散大を確認する。これはそれぞれ、心臓・肺・脳の機能が停止していることを確認する行為だ。

あくまでこれは落ち着いて、予測された死亡を診断するというプロセスだ。

当然、環境が違えば勝手は違う。それはよくわかる。また、最初に書くが救急隊員には日頃から感謝している。学生時代に救急隊に同行するという実習を行ったが、その数時間でも大変なことはあり、頭の下がる思いである。しかし、このニュースはいかがなものであろうか。

mainichi.jp

www.sankei.com

 

通報され、倒れていた人を死亡していると判断したが、生きていたというケースだ。前述のようなケースでなく、いきなり現場に行って「亡くなっているか、かなり状態の悪いのか」不明なところにいくわけだ。

 

<論点1>救急隊員の死亡診断の是非

法的にいえば医師、歯科疾患である場合の歯科医師に限られるということになります。「権限もないのに」という議論は成り立つと思いますが、ミイラ化しているとか、火事現場から出てきて黒焦げだとかというケースであれば、救命よりしなきゃいけないこともあるのでしょう。まぁそれが言い訳にはならないわけですが。

 

<論点2>死亡診断があまりに雑

とにかく、何は何でもこの診断だけは誤ってはいけないという意識で行っている。「(平易な言葉は使うが)モニターでのPEAや死戦期呼吸があり動くこともあります」といってから診断することさえある。毎日の記事によれば、寝具で隠れていたので瞳孔確認していないとのことだが、そもそもに呼吸停止をどのように診断したのか?まさか寝具の上から?目のところには寝具があるが、口鼻や胸などはよく見えるというトリッキーな布団のかぶり方をしていた?卑しくも、人の一生の終わりを決めようというのだ。そんなわけにはいくまい。