どうも、たおらーです。twitterでは書き切れなかったのでこちらに。
CS(クリニカルシナリオ)という概念があります。CS1~CS5に分類し治療方針を決めます
最初みたときは「5つか。多いな」と思いましたが、①2つの例外の排除。②血圧をみるで分類できます。
①2つの例外
とはCS4の急性冠症候群、CS5の右心機能不全
CS4はとっととカテ室行きなさいと言うこと。そもそも来院した瞬間は「心不全」ということを意識しないかもしれません。つまり、いわゆる心不全というのはCS1-3となるわけです。
それを血圧が100-140をCS2としてそれより高いのはCS1、低いのはCS3
何とも単純明快
CS1は血管不全で肺水腫だから血管拡張薬
CS2は水分過剰だから利尿薬
CS3は必要に応じてカテコラミン
このように治療まで決まってしまってなんとも便利です。
そこまではわかるのです。ふと研修医の先生と心不全をみたときのことです。
繰り返し「どういう心不全か?」を意識するように教えてきましたので彼も「血圧156なんでCS1ですね」みたいな感じになった。間違っていない。全くもって間違っていないのだが何か違和感があるのです。
1週間前からむくみが気になり、食欲が落ちてきて、息苦しさが出たのでかかりつけの先生にみてもらったら心不全だったので搬送されてきました(設定はフィクションです)というような経過でした。むくんでいて胸水があって、でも結構けろっとしていて、「えっ?入院なんてきいてないざます」みたいな
これって本当にCS1なのでしょうか。病態としてはCS2に近いような感じがします。利尿薬より血管拡張薬なのでしょうか。
「ザ・CS1」の経過はこうです。
88歳女性、5年前から高血圧を指摘。大阪から孫が帰ってくると言うことで3日前から大掃除を始め、今日は孫の好物の唐揚げを含たくさん料理を作った。食事の片付けくらいからきつかったが、お嫁さんの皿洗いは自分の流儀に合わず少し口げんかしながら自分でやり終えた。
2時くらいに冷や汗をかきながら苦しいといいだした。家族は救急車を呼ぼうと言ったが、朝まで我慢すると拒否。朝4時に耐えられなくなり救急要請。
じっとり冷や汗をかき、救急車内に収容されたときはSPO2 84%。酸素を投与開始するもはずす、つけるを繰り返して搬送。到着時血圧は198/104
ルート確保も困難であったが、ニトロールスプレーを舌下し血管が浮いてきた。ばたばたと検査・治療を開始する。
とまぁこんな感じです。
たしかにクリニカルシナリオは便利だと思うのですが、病態を意識しないで血圧だけ診ると見誤るように思います。あくまで初期対応の検討の一助にはなると思いますが、思うような反応が得られなければそこに固執すべきではないのだと思います。
そもそも血圧だけで心不全を分類しようとするのは「魚があるから和食。肉があるから洋食」くらい乱暴ではないでしょうか。